アグリテックとは?そのメリットやエンジニアの農業業界での役割を解説

AIやロボットなど、急速に発達する先端技術は様々な業界で取り入れられ、業務効率化や人手不足の解消など、各業界の課題解決に役立てられています。
そのひとつが、農業における技術活用です。
「アグリテック」と呼ばれる農業への技術活用は、農業業界でも業界に革新をもたらすとして現在注目を集めています。
今回はそんなアグリテックの概要やメリット・事例とともに、エンジニアが農業業界でどのように活躍することができるのかを解説していきたいと思います。
目次
アグリテックとは?
アグリテックとは、農業を意味する「Agriculture」と技術を意味する「Technology」が組み合わさった言葉で、先端技術を農業に取り入れることで農業業界が抱える課題の解決を目指す取り組みのことを指します。
従来は人の手で行われていた作業に、AIやロボット、データの活用など様々なテクノロジーを用いることにより、作業の効率化や生産性向上など、多くの利益が期待できるでしょう。
「スマート農業」とは?アグリテックとの違い
アグリテックとともによく用いられる言葉に、「スマート農業」というものがあります。
スマート農業は農林水産省によって推進される基本政策のひとつで、同省では「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」であると言われています。
その内容からも分かるようにアグリテックとスマート農業はほとんど同じものを指しており、世界的に同様の取り組みを指す「アグリテック」を、日本では政策として提唱する際に「スマート農業」という名称で呼んでいるということですね。
アグリテックが求められる理由
農業業界では、農業従事者の高齢化と労働人口の減少、また後継者不足などが大きな課題となっています。
農林水産省の調査では2005年には約224万人だった農業従事者人口は2020年には約136万人と大きく減少しているとされており、また、少子高齢化や若い世代が都会に出てしまうことなどもあり、高齢化も問題となっています。
これらは後継者不足にもつながり、知識・技術の継承も難しくなるでしょう。
さらに、その他にも
- 食料自給率の低下
- 環境への負荷
- 気候変動の影響
など農業業界には様々な課題があり、これらの課題の解決のためにアグリテックが推進されているのです。
(参考:農林水産省|(1)基幹的農業従事者)
アグリテックの現状
ご紹介したような理由から、アグリテックの市場規模は年々大きくなっています。
システムなどの導入コストがかかることや、農業従事者の高齢化により新たな技術の利用のハードルが高いことなど、まだまだ導入には課題があるのも事実ですが、国内の農業の課題解決、また食料自給率や環境などの問題を改善していくには、先端技術の力が必要不可欠です。
「スマート農業」として国を挙げて後押しされているアグリテックは、今後もさらに農業業界に革新をもたらす取り組みとして広がっていくことが予測できるでしょう。
アグリテックを導入するメリット
それでは、アグリテックを導入することで具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。
アグリテックによりもたらされるメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 人手不足解消と生産性向上
- 新規参入や知識継承のハードルを下げられる
- 環境への配慮が可能
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人手不足解消と生産性向上
まずは、大きな課題となっている人手不足の解消です。
例えば農機の自動運転・遠隔操作や収穫などへのロボット・ドローンなどの普及により、現在、人の手で行っている作業の負担を大きく減らすことができ、人手不足の解消が期待できます。
作業が効率化できれば生産性を高めることにもつながる他、ドローンやセンサーによる作物の状態把握、データ分析・AIの活用などにより、作物の管理や適切な生産計画の立案に役立ち、安定した生産が可能になるでしょう。
新規参入や知識継承のハードルを下げられる
アグリテックは、高齢化と従事者の減少により問題となっている農業知識の継承にも活用できます。
ノウハウをデータ化できれば、知識の共有へのハードルは低くなるでしょう。
また、データの活用が可能になったり、先端技術の活用により効率的に作業が行えることが分かれば、新規参入のハードルも下がります。
近年では土地の面積に依存しない都市型農業も実現されており、若い世代の方もより参入しやすくなっていくことが考えられます。
環境への配慮が可能
アグリテックは、肥料や農薬など、農業に関する環境への負荷の軽減にもメリットがあります。
例えばAI・ビッグデータを活用して肥料や農薬の量を無駄なく最小限に抑えられたり、自動走行などにより作業を効率化することで、燃料の消費やCO2排出量の削減ができたりといったことが考えられるでしょう。
アグリテックの事例
近年ではすでに、様々なアグリテックの取り組みが行われています。
具体的な事例として、次のようなものが挙げられます。
・ドローンによる農薬散布 ・AI・IoTセンサーによる水や温度などの環境管理 ・自動運転 ・遠隔操作などが可能な農機 ・農作業用ロボットの開発 ・ブロックチェーン技術を用いた出荷後の品質管理や追跡 |
中にはまだ検証段階のものや開発中のものもありますが、これらの技術が将来的に普及し、作業の負担軽減や生産性向上を叶えてくれるでしょう。
アグリテックで需要の高いエンジニアとは?
IT技術を活用するアグリテックで、欠かせない存在と言えるのがエンジニアです。
中でも農業業界で特に需要が高いと言えるのが、AIやロボット、IoT、ビッグデータなどの先端分野のスキルを持つエンジニアですね。
先端分野は急速に発展を遂げており、まだ知識の深いエンジニアが少ないこと、また将来的にもあらゆる分野で活用が期待できる技術であることから、そのスキルは様々な業界で需要があります。
農業業界もそのひとつであり、事例でも挙げているようにAIやデータを活用することでの業務効率化や農機の自動運転、農作業ロボットの開発など、先端技術を用いた取り組みが多数行われています。
アグリテックによる農業革新に携わってみたいという方は、このようなスキルを身に着けておくと良いでしょう。
AIエンジニアについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧下さい。
(内部リンク:https://www.engineer-route.com/column/10407/)
まとめ
今回の記事では、農業業界において注目される「アグリテック」について、その取り組みのメリットや実際の事例、またアグリテックに欠かせないエンジニアの存在についてご紹介しました。
アグリテックは農業の未来を支える非常に重要な取り組みであり、日本国内でも政府によって推進されています。
労働力の不足もあり、アグリテックに携わるエンジニアの需要も高くあるでしょう。
農業業界に興味があるという方は、ぜひエンジニア知識を活かしアグリテックへの貢献を考えてみてはいかがでしょうか。