フリーエンジニアのためのプロジェクトマネジメント教室 〜【第2回】ITプロジェクトの立ち上げ〜 

経営戦略とITプロジェクト

ITプロジェクトはその組織の持つ戦略に従って立ち上がります。
例えば、海外展開という戦略がある企業では、それを達成するために、グローバルなWEBサイトを構築するITプロジェクトを立ち上げたり、経費の削減という戦略を持っていれば、これまで手動で行っていた業務をシステム化するためのITプロジェクトを立ち上げます。

つまりITプロジェクトは経営戦略という大きな目標を達成するための手段の一つであり、その戦略に従ったシステムを構築することがITプロジェクトを成功させる要因の一つであることを理解してください。

発注者と受注者のギャップ

ここまで読んでいただいた読者のなかで、前述の内容がいまいちピントこない方がいるかもしれません。
実は前述のITプロジェクトというのは、自分たちの組織の戦略に対して、それの実現のためにITプロジェクトを立ち上げたケースです。
しかしながら現在のITプロジェクトでは多くの作業を外注するケースがあり、読者の中にはその外注先のプロジェクトのメンバーになっているケースが多いのではないかと思います。
前者のITプロジェクトは「発注側のITプロジェクト」、後者は「受注者側のITプロジェクト」と呼びます。
ここにITプロジェクトの成功を阻む大きな要因があるのです。

発注者側のITプロジェクトは前述のように戦略に従ったプロジェクトを立ち上げ、その目的を達成する必要がありますが、受注者側のプロジェクトが受注したプロジェクト(案件)が予算内で納品することだけを目的としてしまうとプロジェクトに大きな歪を生じてしまいます。
受注者側はプロフェッショナルである点を認識し、発注者のプロジェクトの背景にある経営戦略も理解しながら進めていくことが成功要因の一つであると理解してください。

ITプロジェクトの立ち上げ

ここでは発注者側のプロジェクトの立ち上げについて述べたいと思います。
プロジェクト立ち上げでは、目的・目標、予算、期間、品質、システム化の範囲、システム要件、システム化によって獲得できるリターンといった項目を企画書に表現して、経営層からの承認を得てプロジェクトをキックオフします。

上記のうち、経営層の判断にとって重要なのは、「予算」と「システム化によって獲得できるリターン」になります。
一般にはこの2つをROI(Return On Investment)と呼びます。具体的にいうと、このプロジェクトのために3億円(Investment)かけシステム化を実現し、それによって得られる効果(収益の増加、費用の削減)が3億円以上(Return)であれば、プロジェクト開始を検討する意味がある、というわけです。
当然「予算」が少なければ少ないほどプロジェクトは承認されやすくなります。

もう一つは「期間」です。
経営層はなるべく早く目標を達成させたいと考えますので、これも「期間」が短いほどプロジェクトは承認されやすくなります。

「予算」と「期間」の落とし穴

もしプロジェクト企画を承認してもらうために適当に「予算」を記述したとしたらどうなるでしょうか?
もしかしたら途中で予算をオーバーしてプロジェクトはとん挫してしまうかもしれません。

また「期間」も適当に記述したとするとどうなるでしょう?
仮に本来なら1年かかる期間に対して半年で完了すると記述した場合、無理なスケジュールにより、各担当者に大きな負荷がかかり、それにより品質の低下を招いてしまいます。
それらがテスト工程で露呈し、大きな手戻り工数がかかってしまい、最終的に1年を超えてしまうという状況になってしまいます。

つまり無理なスケジュールを組んでしまうと、結局手戻りの工数が発生するため、本来合理的と考えていたスケジュールさえも守れなくなってしまうということです。
できるだけ合理的な予算・期間を見積もることがITプロジェクトの成功の要因の一つであることを理解してください。

合理的な予算・期間を算出する

プロジェクト立ち上げの段階ではなかなか合理的な予算・期間を出すのは難しいことですが、まずは専門家や有識者の意見を聞きながら、あるいは過去の類似プロジェクトを参考にしながら概算工数を導き出してください。
もし算出した概算工数に信ぴょう性がない場合などは、要件定義フェーズが終わった時点で合理的な工数を出し、改めてプロジェクトを評価してもらう方法もあると思います。
工数が把握できると、それに平均的な単価をかけ合わせれば予算は導き出せると思います。

また期間ですが、日本情報システム・ユーザー協会の2007年の発表によると、工数の立方根の2.4倍が標準的な開発期間で、それを30%以上短縮するのは危険であるとのことです。
例えば1000人月の工数の場合、それを立方根にすると10になり、それを2.4倍にすると24になります。
つまり24カ月が標準期間であり24カ月を30%短縮した16.8カ月まで開発期間を短縮すると危険水域になるということです。

このような情報も参考にしながらできるだけ合理的な予算・期間を導き出し、健全なプロジェクトをマネジメントしていく必要があります。

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この記事を書いた人

高崎敦史 氏

年齢:50代 エンジニア歴:21年
大学卒業後、外資系銀行・コンサルティング会社・ネット企業での勤務を経て、2006年からフリーランスのエンジニアとして始動。
09年にPMP取得した後はプロジェクト・マネジメントの専門家という立場で、多くのIT系プロジェクトを成功に導いている。



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