フリーエンジニアのためのプロジェクトマネジメント教室 〜【第5回】ベンダ側のプロジェクトマネージャが意識すべきこと 〜

課題とリスクについて

皆さんは、開発現場において日々発生する課題をてきぱきと処理しながら作業を進めていると思います。

以前まではこれらの膨大な課題をいかに効率的に処理するかというのが大きな課題でしたが、最近はWeb上でチケットという単位で課題を起票し、処理をしていくシステムが一般的になってきたので、課題のマネジメントというものがかなり効率よくなってきたように思われます。

ただ、効率が良くなってきたのは課題が起票された後の処理の部分で、そもそも課題が発生しにくいようにするにはどうすればいいか、課題が発生したときに適切な判断をするにはどうすればいいか、といった部分はほとんど進歩していないように思われます。

この部分の対応がリスクマネジメントなんです。

ここで少し言葉の整理をしましょう。
仮にあなたが病気になったとします。
ここまま放置すると死んでしまうかもしれません。
このように何かが起きてこのまま放置していると好ましくない事態が起きてしまうことをここでは「問題」と呼びます。

この問題を解決するためには病気を治さないといけません、この病気を治すという問題解決の方向性のことを「課題」と呼びます。

ただし開発現場ではあまり問題と課題を明確に分けてはいませんね。
なぜなら不具合が起きた → このまま放置するとリリースできない →では改修しよう という感じですぐに問題がすぐに課題になってしまうのであまり意識していないと思います。

話を戻します。
病気になってからでは遅いということも、しばしばありますよね。
病気にならないように、とか、病気になった場合にどうするか、とか最悪の事態が起きたらどうするか、とか考える必要があることは皆さんにもわかっていただけると思います。
これがリスクマネジメントなんです。

既に起きていることが「問題」でその解決方針が「課題」でしたね。
そしてこれから起きるかもしれないことが「リスク」ですね。

そしてその解決方針に当たるのが以下の4つです。
「予防」、「軽減」、「転嫁」そして「容認」

予防

またまた病気に例えてみると、インフルエンザにならないように予防接種するのがまさに「予防」に該当します。

軽減

「軽減」は、毎年健康診断やがん検診を受診することで、万一発見された場合も早めの治療で影響を最小限にとどめることができます。

転嫁

「転嫁」については、あまり言いたくはないですが、万一最悪の事態が生じた場合に備え、生命保険を掛けておくということです。
つまり保険会社に被害を転嫁しているという考え方です。

容認

最後に「容認」、例えば転びたくないから、足をくじくのが嫌だから、予防策としてスポーツはしないということになると少し極端ですよね。

そういう場合はそれが起きてもしようがないと容認したほうがいい場合もあります。
しかし明日が結婚式という日に、怪我をするのを避けるためにスポーツはしないという予防策は共感できますよね?

つまりその事象が起きた際の影響を考慮しながらリスク対策は考えないといけないということです。

ベンダ側のプロジェクトマネージャの意識すべき「リスク」

基本的に現場というのは既に発生した「問題」「課題」の処理で精一杯です。

マネージャは「問題」「課題」が発生しない、発生したとしても影響を最小限にすることを考えないと現場はオーバーフローしてしまいます。

言い換えると現場は「ドライバー」、マネージャは「ナビゲータ」です。
ドライバーは一生懸命運転に専念します。

ナビゲータはゴール地点までのコースを俯瞰して、その先にどんなことが起きそうなのか、それに対してどのような対策を講じるのかを「常に」意識する必要があります。

例えば、ベンダ側のプロジェクトのゴールが「ユーザの受入テスト」までと仮定すると、受入までに何が整っていないといけないのでしょうか?

所定のスコープで一定の品質の成果物が完成しているのは当然ですが、
データ移行は?
マニュアル作成は?
運用は?
と、どんどん想像を膨らましてください。

そこであなたが認識する「心配ごと」がリスクです。

それをどんどん手前に持ってきてください、ユーザの受入より手前、例えばシステムテストを開始するまでに、
どんな状況になっていないといけないでしょうか?
インフラは?
テスト体制は?不具合管理の方法は?
仕様の齟齬が発生したら?
等々とにかく早めに「心配ごと」を見つけることが大切です。

そしてもう一つ、今の現場の状況からリスクを感じ取ることも必要です。

「〇〇さん、一人で頑張ってるけど、もし倒れたらプロジェクトに大きな影響あるぞ」とか、ユーザとのミーティング後に「あれ、もしかしてユーザと仕様の齟齬があるかもしれないぞ」とか、いろいろな「心配ごと」を感じてください。

遠い未来を想像して出てきた「心配ごと」、そして現在の状況から近未来を予想して出てきた「心配ごと」これらに対して、もしそうなった場合の影響度合いと、そういったことが起きるかもしれない確率を考慮したうえで、優先度の高い順に「予防」「軽減」「転嫁」「容認」といった対策を考えましょう。

過去を見て反省し、未来を見て予測し、現在を見て状況把握して、やるべきことをやるのがマネージャなのです。

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この記事を書いた人

高崎敦史 氏

年齢:50代 エンジニア歴:21年
大学卒業後、外資系銀行・コンサルティング会社・ネット企業での勤務を経て、2006年からフリーランスのエンジニアとして始動。
09年にPMP取得した後はプロジェクト・マネジメントの専門家という立場で、多くのIT系プロジェクトを成功に導いている。




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